先日LDLコレステロールと動脈硬化についての記事を公開しました。
今回は、LDLコレステロールに対する栄養指導について、当院の管理栄養士によるコラムです🥕
具体的にどんな食事や調理法に気をつけたら良いか、わかりやすく解説して頂きました。
日々の生活習慣を見直すきっかけにして頂ければと思います。
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LDL コレステロール、いわゆる悪玉コレステロールというのは過剰になると体に様々な悪影響を及ぼ します。 食品では動物性食品に多く含まれ、肉や卵などを代表に様々なものに含まれます。食品に含まれるコレステロールを食事性コレステロールと呼びます。摂りすぎれば体内にコレステロールが増加する傾向が あることは間違いありません。 しかし人の体内のコレステロールは、食事で摂取するものが全てではありません。自身の体で作られるものの方が圧倒的に多いです。そして人体で作り出されるために、コレステロールが増えやすいかどうかは個人の形質や遺伝的素養によるところが大きく、食事や運動で調節することが可能です。
⬛︎コレステロールの上がる食生活
コレステロールの上がりやすい食生活かどうかは、PFC バランスによるところが大きいです。 もちろん動物性食品の摂りすぎ、コレステロールの多い食品が多い、ということもコレステロール値が上がる一因にはなりますが、前項で述べました通り人の体が作り出す分がほとんどです。コレステロールが作られやすいかどうかには個人差が大きいです。コレステロールを摂取することで極端に上がりやすい人もいれば、コレステロールに気を付けていても上がりやすい人もいます。
PFC バランスというのは、エネルギーになる三大栄養素、P(たんぱく質)、F(脂質)、C(炭水化 物)のエネルギー割合のことを指します。一日に摂取したエネルギー量(カロリー)のうち、たんぱく質が13~20%未満、脂質が20~30%、残りのエネルギーを炭水化物で摂るというバランスが推奨されています。 コレステロールに気を付けたい場合、着目すべきは脂質の量です。コレステロールは脂質から作られます。PFCバランスが脂質に寄っているとコレステロールが上がりやすいです。脂質は水と共存しにくく、また g(グラム)あたりのエネルギー量が炭水化物やたんぱく質の倍以上あるため、うかつに炭水化物を減らしてしまうと脂質に偏った食生活になってしまいがちです。
⬛︎何を食べるべきか、控えるべきか
まず野菜を十分にとりましょう。野菜に含まれる水溶性食物繊維は、過剰なコレステロールを排出してくれる効果があります。
動物性食品は良質なたんぱく質ですから、必要なだけ食べることは重要です。しかし飽和脂肪酸やコレステロールが高いこともまた事実です。
例えば、油の少ない部位を選んだり、食卓に並ぶおかずのうち、 肉や魚は一種類にするなど、過剰な量を摂らないよう工夫しましょう。
次に調理法です。時間がない時や暑い季節など、炒め物が多くなっていませんか?食材の量に対して必要な油の量も多くなります。揚げ物はもちろん、炒め物に関しても注意が必要です。焦げ付きにくいフライパンを使用したり、水とフタを利用して蒸し焼きにすることで油の使用量を減らすことができます。レンジ調理やグリルを活用することもまた有用です。
また、炭水化物の内、脂質になりやすいルートで消化吸収される砂糖を含む甘いものや、中性脂肪を増やすアルコールは控えるべきものです。コレステロールが高い方はもう一度見直してみる必要がありそうです。
⬛︎運動
脂質は人体のエネルギーの保存形態です。ただし衣替えの時にしまい込んだ段ボールのように、なかな かすぐ利用しやすい形態にはなりません。 体の脂肪を増やさないよう、余ったエネルギーがしまい込まれる前に、運動で消費しましょう。20 分 以上の運動で体にため込んだエネルギーも消費し始められます。
⬛︎食べ過ぎない、野菜、運動。
ありきたりで昔から言われてきたことですが、健康の基本です。日本人の食事摂取基準によると、一日の野菜の目標量は成人で 350g と言われています。達成することはなかなか難しい量ですが、今よりも 一歩目標に近づくことで、より健康に近づけるはずです。
⬛︎もう少し聞きたい!Q &A
🥕Q.飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について教えてください。
🍅A.飽和脂肪酸はコレステロールの材料になります。動物性食品に含まれることが多く、常温で固まりやすい性質を持ちます。(肉の油は常温で固まりますね。)
一方、不飽和脂肪酸は、常温で固まりにい性質を持ちます。(魚の油は常温でもサラサラしていますね。
不飽和脂肪酸は脂質を減らしてくれるといわれていますが、不安定な物質なので、光や熱で酸化しやすく、酸化すると飽和脂肪酸になってしまいます。不飽和脂肪酸にも種類があり、一価脂肪酸(オレイン酸など)と多価脂肪酸(DHA、EPA、リノール酸、リノレン酸など)に分けられます。一価よりも多価の方がLDLを下げる効果は強いですが、より酸化されやすい性質を持ちます。
脂肪酸も脂質に分類されるため、普段の食事に「足して」しまうとかえってPFCバランスがF(脂質)に寄ってしまうことがあるため、注意が必要です。「足す」のではなく、「置き換える」ようにしましょう。
🥕Q.魚を食べてれば大丈夫?
🍅A.不飽和脂肪酸は酸化されやすいため、魚から不飽和脂肪酸を効率よく摂取したい場合、生食であるお刺身が1番おすすめです。
魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸は効果が高いと言われいますし、調理過程で全てが飽和脂肪酸になる訳ではないので、煮魚や焼魚も、良質なたんぱく質の摂取元としてはよいでしょう。
しかし、肉も魚もたんぱく質が多い部位や種類は20%くらいで、脂の多い部位や種類では肉と魚で脂質の量にあまり差がなかったりもします。「魚を食べているから安心」というわけでなく、あくまで野菜と糖質などとバランスよく食べることが大切です。
🥕Q.お肉やお魚で脂質が低くてタンパク質の多い部位は?
🍅A.お肉は牛なら赤身、豚はバラよりは肩肉が良いでしょう。鳥はもも肉よりむね肉にタンパク質が多いですが、もも肉の皮を外したものと、むね肉の皮ありだと、脂質の割合は同じくらいになってしまいます。
魚はさっぱりした系のもの、鯛とか川魚。旬の鯖やサンマは結構脂質が多いので、気をつけましょう。
ちなみに、牛肉にも一価不飽和脂肪酸は含まれています。良質なたんぱく質には違いないので、適正量を守って摂りすぎないようにすれば、食べても問題ありません。
🥕Q.ナッツは体に良いと聞きましたが、本当ですか?
🍅A.ナッツは、不飽和脂肪酸とビタミンEの持つ酸化防止作用により、体に良いと言われています。しかし、ナッツも重量の50%は脂質なため、食べすぎ注意です。
🥕Q.オリーブオイルは体に良いと聞きましたが、本当ですか?
🍅A.オリーブオイルには、一価脂肪酸であるオレイン酸が含まれています。生のオリーブオイルを健康のために飲んでいるという話も聞きますが、これも取りすぎると脂質の割合をオーバーしてしまいます。適正量を守りましょう。
脂質はとても酸化しやすい存在なので、オリーブオイルなども常温で保存していると酸化しやすいです。黒い瓶を冷蔵保存するとよいでしょう。ちなみにサラダ油にも不飽和脂肪酸(1価)は含まれています。