胃カメラを楽に飲むコツ〜鼻から?or鎮静剤?〜

今年も健診・検診のシーズンとなりました。

6月からは三鷹市胃がん内視鏡検診が始まります。

 

今回は、少しでも楽に胃カメラを受けていただくために当院で工夫していること、鼻からと鎮静剤どっちが楽かなど、患者さん側に知っていただきたいことについて記します。

 

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◾️胃カメラを上手に飲むコツ

検査を受けて頂くにあたり、知っておいていただきたいこと。

胃カメラを飲むコツは、

力を抜き、医師にゆだねること。

これが1番です。

できるだけ無心に。

 

私が検査前に具体的にご説明しているのは、以下のようなことです。

・肩や首に力が入りやすいので、意識して肩を下げ、力を抜くこと。

・「カメラを飲み込んで」と言われた時以外は、できるだけ喉を動かさないようにすること。唾を飲み込もうとすると、麻酔の影響でうまく飲みこめずにむせこんだり、喉の違和感が気になってしまいます。また、飲み込んだ唾液をカメラで洗い流したり吸ったりしなければならず、検査時間が長くなってしまいます。

左の頬を枕にぴったりとつけ、唾が自然と口の外へ流れ出るようにしましょう。

・遠くをぼんやり眺めて無心になること。目をぎゅっとつぶると、意識がのどに集中してしまいます。

・呼吸をゆっくりすること。特に、吐く息を長くとることでリラックス効果があります。


◾️当院の胃カメラ

当院では、胃カメラをする時に、患者さんへの声掛けを大切にしています。

検査中は、大体ずっと話しかけながら検査をしています。

もちろん患者さんにお返事をして頂く必要はありません。

声掛けに耳を傾けて頂くことで、気を紛らわせたり、リラックスして頂くためです。

 

また、胃カメラは医師によって観察の仕方(手順)がある程度決まっているので、それを覚えて頂くことで次回以降も「次はこうなるな」とか「ここを過ぎればもう大丈夫」とか「もう終わりだな」といったことを覚えて頂くことも、心構えとして大切なことだと思っています。

 

具体的な声かけとしては、

 カメラが入っていきますよ。

 息を吸って、吐いて。

 狭いところを通りますよ。

 カメラを一旦止めますよ。

 カメラを動かしますよ。

 これから胃を押される感覚がありますよ。

 いま十二指腸に入りましたよ。

 胃に空気を溜めていくのでげっぷを我慢して下さい。

 カメラを抜いて来ますよ。

などです。

 

胃カメラが初めての方という方、胃カメラが苦手という方は緊張されている方が多いので、特に気をつけてお声掛けをさせて頂いています。

 

また、看護師さんのサポートも重要だと考えています。

 

一度反射が始まってしまっても、看護師さんに声をかけてもらったり、背中をさすってもらううちに少しずつ落ち着く、ということもあります。

(体を触れられるのが不快という方はお申し出下さいね。)


◾️胃カメラが苦手な方

 若い方は高齢の方に比べて喉が敏感なことが多いです。

 歯磨きをするだけでオエッとなってしまう方は、咽頭反射が強いので、胃カメラを飲むのが苦手な方が多いです。

 緊張しやすい方は、喉に力が入ってしまうことがあります。

 喉の狭い部分にひだがあるのですが、そのひだが深い方はカメラの先端がが引っかかりやすく、飲み込む時に違和感があることがあります。

 高齢の方などで腰が曲がっている方は、喉の入口のカーブが若い方より急で、喉を超える時にひっかかる感じがすることがあります。

 生まれつき、ないし胃潰瘍などによる変形で胃が捻れている形をしている方は、胃の中でカメラを進める時に不快感があることがあります。

 

こういった難しい方こそ検査医の腕の見せどころ、という感じになるのですが、

反射が強くてどうにもならないこともあります。

カメラを入れる前から麻酔のスプレーやゼリーだけで吐き気が止まらないというような敏感な方も時折いらっしゃいます。

 そういった方は、鼻からのカメラや鎮静剤を使用した胃カメラの方が、起きた状態の口からのカメラより楽に行えると思います。


◾️鼻からと鎮静剤どっちが楽?

 

胃カメラは鼻からと口から行えるものがあり、鎮静剤を使用する場合には通常口から行います。

 

鼻からと鎮静剤とどっちが楽なの?

 と聞かれることがよくありますが、

 

人によって違います😅

 

それは、鎮静剤の効きやすさが人によって違うからです。

 鎮静剤が効きやすい人は、寝ている間に検査が終わってしまうのでとても楽にできると思いますが、

若い方や、睡眠薬を常用している方、お酒に強い方は鎮静剤が効きにくいことがあります。

鎮静剤が効かずに苦しい思いをした方は、起きた状態でも鼻からのカメラの方が楽な場合もあります。

 

◾️鼻からの胃カメラ

鼻からのカメラは、一般的な口からのカメラの半分くらいの太さです。

また、オエっとなる咽頭反射は、舌の付け根や軟口蓋というのどの奥の場所を刺激する事で起きやすいのですが、鼻からのカメラはこの部分を刺激しにくいルートで入るため、反射が起きにくいです。

 

昔は鼻からのカメラは口からのカメラより画質が劣るということが問題点でした。

現在は口からのカメラと比較しても遜色のない画質・明るさでの鼻からのカメラが開発され、この欠点が解消されたので、新しいカメラを導入している医療機関であれば、画質が悪いことによる見逃しは心配いりません。

当院でも画質の良いものを採用しています。

 欠点としては、骨格や鼻に炎症があるなどで、カメラが鼻を通らないことがあります。

また、カメラが細くてしなりやすいので、胃の形によっては、生検(粘膜を摘みとる検査)がとりにくい場合がたまにあります。

カメラが細い分、空気や水を出し入れしたり、粘膜面を洗ったりするのに多少時間がかかります。

 

◾️鎮静剤を使用した胃カメラ

鎮静剤を使用してみたいけど、なんとなく怖いと思っている方もおられるかもしれません。

 

実は、内視鏡検査において、保険診療で正式に認められている鎮静剤は現時点ではありません。

それでも、楽に内視鏡を行うには鎮静剤が有益であることは周知の事実です。

少し前までは、各医療機関で独自に鎮静剤を使用しているような状態でした。

現在は、日本消化器内視鏡学会が内視鏡において鎮静剤を安全に使用するためのガイドラインを作成しています。

鎮静剤は、正しく使えば安全に楽に内視鏡を行えます。

 

当院では、内視鏡学会のガイドラインで推奨されているミダゾラムという種類の鎮静剤を使用しています。

ミダゾラムには、眠たくなる作用、オエっとなる反射を抑える作用、リラックスする作用、不安を抑える作用、検査前後のことを忘れてしまう作用があります。(鎮静剤の種類によって作用は異なります。)

完全に意識がないくらい眠るというよりは、ぼーっとしているけど、声かけには応答できるという程度が、副作用のことを考えても、安全に検査を行える量だといわれています。

薬の効き方は個人差が大きいので、初めて鎮静剤を使う場合にはちょうど良い量を見定めるのが難しい場合もあります。

鎮静剤が効かずにオエっとなったり体を動かして辛そうにしていても、検査自体のことを覚えておらず「楽だった!」と仰る方もいれば、

検査者からは寝ているように見えても、途中から目が覚めてしまっていた、ということもあります。

 

当院では、楽にできるということはもちろんですが、安全に行うことを第一に考えています。

前回の記録があれば前回の記録を見て、体格やお酒の強さなどを参考にしながら初めの投与量を決めます。30秒から1-2分で効いてくるので、その時の様子で足りなければ薬を足していきます。

「辛い時には手を上げて教えて下さい。」など、お声かけをしながら検査をしています。

検査後に量が不十分だと判断した場合や、検査後にふらつきや不快感が残るなどの場合には、次回以降の鎮静剤の量や追加のタイミングをご相談させて頂きます。

 

鎮静剤を使用した後は、30分から1時間ほど院内でお休みいただいてからお帰りいただきます。

検査が終わって意識がはっきりしたように思っても、その日1日はぼーっとしたり眠たくなったり、検査自体のことを忘れてしまったりすることがあります。

できるだけ検査後のスケジュールは入れずにゆったりと過ごしましょう。特に運転や大切なお仕事が控えている日は、鎮静剤を使用した検査はやめましょう。

 

検査の結果は当日中に画像をお見せしながらご説明していますが、鎮静剤の影響で説明の内容を忘れてしまうという場合もあります。その場合は後日改めて結果をご説明しますので、お声かけ下さい。

 

◾️鎮静剤を使えない方

当院で使用しているミダゾラムというお薬は、閉塞隅角緑内障という特殊なタイプの緑内障の方には使用できません。緑内障があるという方は、事前にかかりつけの眼科の先生に、使用できない薬がないか確認しておくと安心です。

また、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)の治療薬を使用中の方にも使用できません。

その他、重症筋無力症、ミダゾラムに対するアレルギーのある方も使用できません。

 

頻度としてはあまり多くはないですが、ご本人に記憶がなくても、検査中にすごく反射が強かったり、体を激しく動かしてしまう方がたまにいらっしゃいます。

「脱抑制」といって、鎮静剤が効きすぎて、無意識下に理性を失ってしまい、かえって体を動かしてしまうような状態です。

あまり体を激しく動かしてしまう場合は、例え本人が後々忘れてしまうとしても、カメラによってのどや胃腸に傷がついてしまったり、台から落ちて怪我をしたり、医療者を蹴とばして怪我をさせてしまったりという恐れがあります。

そういったことがあった方は、患者さんと医療者双方の安全のために、鎮静剤を理性が働く程度の少なめの量にするか、起きた状態での鼻からの検査をご相談させて頂くことがあります。

 

 

鎮静剤の効き方は本当に様々です。

前日に緊張して眠れなかったとか、いつもと体調が違うなどの場合には、同じ人に同じ量を使用しても、全然効かなかったり、逆に効きが良かったりすることもあります。

また、鎮静剤の効き方はマイルドでも、声かけによってリラックスできたために検査が楽だったとお言葉を頂くこともあります。

その日のコンディションを見ながら、できるだけ安心・安全に検査を行うよう心がけています。不安なことがあればお気軽にご相談頂ければと思います。